不動産売買トラブル

不動産というよりも売買契約におけるトラブルの類型として、契約不適合責任というものがあります。
契約不適合責任とは、当初の売買契約の内容とは適合しない、すなわち目的物に何かしらの瑕疵(トラブル)があり、契約の内容を達成できないときに、売主側に課せられる責任のことを指します。

 

本ホームページでは、不動産の契約不適合責任について解説をしていきます。

 

◆買主の権利
売買契約によって取得した不動産に瑕疵があった場合には、買主は権利行使をすることができます。
買主が行使できる権利の内容には、民法に規定があります。
追完請求権(562条)、代金減額請求権(563条)、損害賠償請求権及び解除権(564条)です。

 

・追完請求権
追完請求とは、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」に、「目的物の修補、代替物の引き渡し又は不足分の引き渡しによる」履行の追完を求めることを指します。

 

種類、品質又は数量に関して契約の内容が適合しないとき、とは不動産の取引においてはどのような場合があるか、具体例を示していきます。

 

種類が契約の内容に適合しない場合とは、買主が購入した土地の上にさらに建物を建てる場合であったり、土地そのものを購入した際に、買主の不動産購入の目的に合致しない種類の土地、建物であったような場合が挙げられるでしょう。
種類に関する瑕疵があった場合には、代替物の引き渡しを請求することが想定されます。

 

品質が契約の内容に適合しない場合とは、購入した土地の土壌が汚染されていたような場合や、建物の耐震性が不適当な場合であったり、地盤沈下によって傾いているような場合が挙げられます。
品質に関する瑕疵があった場合には、目的物の修補を請求することが考えられます。

 

数量が契約の内容に適合しない場合の例としては、単純に購入した土地の面積が、契約時に伝えられていた面積よりも下回るような場合が挙げられます。
数量に関する瑕疵は、不動産の場合には、追完による履行の請求が難しいため、他の手段を取ることとなるでしょう。

 

もっとも売主としては、買主に不相当な負担を課するものでないときには、買主が指定した追完の方法以外によっても、追完することができます。
また、上記のような瑕疵の発生が、買主の帰責事由によるものである場合には、買主は追完請求を行使することができません。

 

・代金減額請求権
代金減額請求とは、その字の通りで、代金の減額を求めることを指します。
権利の発生条件は、追完請求権と同様であり、目的物に種類、品質、数量の瑕疵があった場合となります。

 

また、そのほかにも相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、履行の追完がないときにのみ、行使することのできる権利となります。

 

すなわち、代金減額請求は追完請求の存在を前提にするものであり、両者を同時に請求することはできないということです。

 

さらに、代金減額請求は催告をすることなく行使できる場合についても定めています。
563条2項各号の事由です。
①履行の追完が不能であるとき。
②売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
③契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
④前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。

 

追完請求の説明の中で、不動産の数量に関するトラブルは追完による履行の請求が難しいというお話をしました。
足りない土地面積を増やせという請求は不可能であることは明らかであるため、上記1号の「履行の追完が不能であるとき」に該当することとなり、代金の減額を請求することとなります。

 

減額される代金は、不適合の程度に応じたものとなります。

 

また、代金減額請求も追完請求と同様に、買主の帰責事由がある場合には、権利行使をすることができないと定めています。

 

・損害賠償請求及び解除権
564条では、追完請求もしくは代金減額請求をした場合であっても、損害賠償請求並びに解除権を行使することを妨げないとしています。

 

基本的には、追完と代金減額が損害賠償とセットであり、履行の追完をしてそれでも履行をしない場合には、代金減額ではなく解除を選択することができると考えるのが自然といえます。

 

目的物の瑕疵を追完、もしくは代金を減額させたにもかかわらず、契約を解除してしまうのは権利濫用になる恐れがあるからです。

 

◆買主の権利制限
買主も上記の権利を無制限に行使できるわけではありません。
目的物の瑕疵を発見したのが、引き渡しから10年後のような場合には、もはや最初からあった瑕疵かどうかすらもわからないため、民法は上記の権利行使に期間による制限を定めています。

 

民法566条では、種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものが引き渡されたとき、買主がその不適合を知ったときから1年以内に売主に通知をしない場合には、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、解除をすることができません。

 

この瑕疵の中には、数量に関する契約不適合は含まれていないため、ご注意ください。

 

ただし、この制限にも例外はあり、売主が上記の瑕疵を引き渡しの際に知っていた場合や、重大な過失によって知らなかった場合には、買主は期間制限なく権利行使をすることができます。

 

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吉岡 正太郎Yoshioka Shotaro

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所属団体
  • 東京弁護士会
  • 第二東京弁護士会
  • 法教育委員会
  • 高齢者・障害者の権利に関する特別委員会
  • 犯罪被害者支援委員会
経歴
  • 学習院大学法学部法学科卒業
  • 日本大学法科大学院修了
  • アーチ日本橋法律事務所開設

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